ADHD(注意欠如・多動症)の特性である「多動力」は、起業活動において大きな武器となります。本記事では、多動力を効果的に活用し、起業を成功に導くための具体的な方法を解説します。
目次
多動力とは何か?
多動力とは、興味・関心があちこちに移る特性を指します。一般的にはマイナスイメージで語られがちですが、実は起業家にとって重要な資質です。
多動力の3つのタイプ
多動力には大きく分けて3つのタイプがあります。まず思考面の多動は、頭の中で様々なアイデアが次々と浮かぶ状態です。次に行動面の多動は、仕事、健康、趣味など複数の分野で同時に活動する傾向を指します。最後に感情面の多動は、落ち着かない感覚や体の反応として現れます。
重要なポイントは、多動力自体は悪いものではないということです。問題は、エネルギーが分散してしまい、一つのことに集中できなくなることにあります。
多動力を活かせない理由
多くの方が多動力を活かせない理由として、いくつかの共通点があります。最も大きいのは理想の未来が明確でないことです。また、自己客観視ができていないため、自分のエネルギーがどこに向かっているのか把握できていません。さらに目標が不明確なまま活動していたり、行動しないまま学習ばかりしているケースも見られます。
人間は本能的に現状維持を好む生き物です。変化を避けようとする無意識の力が働くため、意識的に理想の未来に目を向ける必要があります。
実践ワーク1:3日後引き寄せ日記
3日後引き寄せ日記は、理想の未来を具体的にイメージするための効果的な手法です。
やり方
まず感情から始めることが重要です。3日後の夜、自分が嬉しい・楽しいと感じている場面を想像してください。次に、その時何をしているか、何が起きたかを具体的に書き出します。このとき、「〇〇を引き寄せました」という過去形で書くのがポイントです。
この習慣を続けることで、下を向く癖から上を向く癖へと変化していきます。日々の生活の中で制約や問題に目が向きがちな状態から、理想の未来が徐々に見えるようになっていきます。
実践ワーク2:自分が得たい結果を明確にする
自分が本当に得たい結果を明確にするために、5つの質問に答えていきましょう。
5つの質問
第一に「自分が得たい結果は何か?」を考えます。次に「なぜその結果が欲しいのか?」を深掘りし、「どうすれば実現できるか?」を具体化します。さらに「今の状態が続くとどうなるか?」を想像し、最後に「100点満点の状態はどんな状態か?」を描きます。
ここで注意したいのは、「会社を辞めたい」といった表現は偽の願望だということです。本当の願望、例えば「自分らしく生きたい」「時間と場所に縛られずに働きたい」といった本質を見つける必要があります。
客観視の重要性
起業活動において、客観視は最も重要なスキルの一つです。
客観視とは
客観視とは、自分とは異なる別の視点で物事を見ることを指します。これにより、エネルギーの分散を防ぎ、優先順位を明確にし、効果的な行動を選択できるようになります。
ビジネスにおいては、お客様の目線で見る能力が特に重要です。同業者の視点、投資家の視点など、様々な角度から自分のビジネスを見ることができれば、それだけビジネスは発展していきます。
客観視の実践方法
1. 点数評価法
まず、今の自分の状態を100点満点で評価してみましょう。次に、なぜその点数なのか理由を書き出します。できれば、仕事・健康・趣味など各分野ごとに評価を行うとより効果的です。
ここで重要なのは、減点方式ではなく、できていることに注目することです。学校教育では満点から減点する方式が一般的でしたが、ここでは「今どこまで進んでいるか」という加点方式で考えてください。
2. エンプティチェア法
エンプティチェア法は、3つの椅子を用意し、異なる視点を物理的に切り替える手法です。
経営者目線では、投資回収のバランスを考えます。時間とお金という資源をどこに投入するかを判断する視点です。管理者目線では、行動管理を行います。どのタスクをいつ実行するか、進捗はどうかを確認します。作業者目線では、実際の作業を行います。
多くの起業家は作業者目線に偏りがちです。特に職人タイプの方は、作業に没頭してしまい、経営や管理がおろそかになります。意識的に経営者・管理者の視点を持つことで、バランスの取れた事業運営が可能になります。
思考面の多動力を活かす方法
記録とアウトプット
思考が次々と浮かぶ方は、すべて記録することが重要です。
推奨されるツールとして、ポストイットを壁に貼る方法があります。思いついたことをすぐにポストイットに書いて壁に貼り、後でまとめる作業を行います。また、イーゼルパッド(大きなポストイット)を使えば、より大きなスペースで思考を整理できます。音声メモも有効な手段です。
ここで重要なのは、記録してから編集するという順序です。最初からまとめようとすると、思考の流れが止まってしまいます。まずはすべて出し切ることに集中しましょう。
環境を変える
入力情報が変わると、アウトプットも変わります。同じ場所で同じように考えていても、新しいアイデアは生まれにくいものです。
実践例として、海岸で仕事をしたり、カフェを移動しながら作業したり、散歩や自転車で移動しながら考えるといった方法があります。成功している起業家、例えばネットマーケティングで有名なリッチ・シェフレンは、海岸、オフィス、シガーバーなど場所を変えながら仕事をしています。また、バージングループの会長リチャード・ブランソンも、ほとんどオフィスにおらず、海岸でサーフィンをしながらアイデアを練ることで知られています。
歩くことも重要です。脳が揺れることで情報が変わり、アイデアが出やすくなります。最近の研究では、散歩よりも自転車の方が健康的だという指摘もあります。自転車は移動距離が長く、様々な景色を見ることができるため、入ってくる情報が変わりやすいのです。
感情面の多動力:フォーカシング
落ち着かない感覚は、体からのメッセージです。これを読み解く技法がフォーカシングと呼ばれるものです。
フォーカシングの手順
まず深呼吸をしてリラックスし、瞑想状態に入ります。次に体の感覚を確認して、違和感がある場所を見つけてください。見つかったら、その部位に向かって「こんにちは。あなたがそこにいることに気づきました」と挨拶します。
その感覚に「イライラ君」「ソワソワ君」といった名前をつけ、その感覚と対話を始めます。「何を伝えようとしているか?」「何をして欲しいか?」「すべて大丈夫になったらどんな感じか?」といった質問を投げかけてみてください。
最後に、メッセージをくれたことに感謝します。「あなたの気持ちを教えてくれてありがとう。あなたのことを大切に思っているよ」と伝えましょう。
体の部位とメッセージ
体の各部位が発するメッセージには傾向があります。喉に違和感がある場合、言いたいことが言えていない可能性があります。胸は愛情不足や自信のなさを示すことが多く、胃はやりたくないことを無理してやっている状態を表します。下腹は不安や恐れを感じている時に反応し、首・顎は責任感の強さや緊張を示します。
これらは一般的な傾向であり、人によって異なる場合もあります。大切なのは、自分の体の声に耳を傾け、対話することです。
パーミッション(許可)ワーク
制限を外すために、自分に許可を与えることが重要です。
例えば「1億円を手に入れても良い」「会社を休んでも良い」「スキルがなくても始めて良い」といった言葉を、声に出して自分に言い聞かせます。何度も唱えることで、無意識の制限が外れていきます。
論理的には可能だと分かっているのに行動できない場合、感情的な制限がかかっていることが多いのです。このワークを通じて、その制限に気づき、解放することができます。
起業活動で重要な原則
1. 本を読むことは起業ではない
学習は確かに重要です。しかし、行動しなければ結果は出ません。本を読むこと自体が目的になってしまい、起業活動をしていると錯覚するケースが非常に多く見られます。
目的を持って読み、読んだ内容をすぐに実践することが重要です。自分の行動に生かすために読むという意識を持ちましょう。小説を読むことも悪くはありません。日本語の表現力を養い、自分なりの言葉を見つけることに役立ちます。ただし、それが起業活動の代わりになってはいけないのです。
2. 集客に8割の時間を使う
起業初期は、やることが無限にあります。商品開発、ウェブサイト制作、SNS運用、ブログ執筆など、すべてが重要に思えます。しかし、最も効果が高いのは集客です。
どれだけ良い商品やサービスがあっても、お客様がいなければビジネスは成り立ちません。起業初期の8割の時間は集客に使うという意識を持つことをお勧めします。
3. お金を稼ぐことに集中
理想やビジョンは大切です。しかし、まずは収益化が必要です。お金がなければ、活動を継続することができません。
お金を稼ぐことに罪悪感を持つ必要はありません。それはあなたの価値を提供し、対価を受け取るという正当な行為です。
4. 目標を持つ
目標は客観視の最高のツールです。ゲーム感覚でも構いません。例えば「今月5名集客する」といった具体的な数字を設定しましょう。
重要なのは、目標と現状のギャップを埋めるためにどうするかを考えることです。結果が出ないことと、あなた自身の価値は無関係です。結果が出ていないのは、単に状態が良くないだけで、対策を考えれば良いのです。
健康管理の重要性
起業活動は自分が資本です。健康状態が悪いと、良いパフォーマンスは出せません。
深呼吸は最も簡単で効果的な方法です。焦っている時、感情的になっている時は、呼吸が浅くなっています。深呼吸をすることで前頭葉に血流を送り、冷静な判断ができるようになります。
散歩・自転車は、情報を変え、体を動かすことで、思考をリフレッシュさせます。特にADHDの方は、座りっぱなしよりも、適度に体を動かしながらの方がパフォーマンスが上がります。
睡眠も非常に重要です。疲れている時は休む勇気を持ちましょう。無理に作業を続けても、効率は上がりません。
ADHDの方には特別な工夫も効果的です。デスク下に自転車を漕ぐ装置を置く、バランスボールを椅子の代わりに使うなど、体を動かしながら作業できる環境を作ることで、集中力が持続しやすくなります。実際の研究でも、多動を抑えない方が学習効果が高いという結果が出ています。
よくある失敗パターン
エネルギー分散の罠
色々な活動に参加しすぎてしまう、本を読むだけで満足してしまう、自分にとって役立っていない活動を惰性で続けてしまう。これらは多くの起業家が陥る罠です。
対策として、定期的に自分の活動を書き出し、それが理想の未来に繋がっているかを確認しましょう。週に一度、月に一度の振り返りを習慣化することで、無駄な活動を減らし、本当に必要な活動に集中できるようになります。
制限の思い込み
「会社があるから無理」「お金がないから無理」「時間がないから無理」。これらは本当に制限でしょうか?
確認すべきポイントは、それは本当に制限なのか、他の選択肢はないのか、ということです。例えば「会社があるから無理」という場合、本当に会社を辞める以外の選択肢はないのでしょうか? 早朝や休日を活用する、副業として始める、休暇を取って集中的に作業する、といった選択肢もあるはずです。
思い込みによる制限を外すことで、行動の幅が大きく広がります。
まとめ:多動力を成功に変える7つのステップ
多動力を成功に変えるためには、以下の流れを意識してください。
まず理想の生活を明確にすることから始めます。次にその生活を達成するための目標を作り、複数出てきた目標の中から最も効果が高い目標を1つ選びます。そこから具体的なタスクを作り、日々の活動を通じて実行していきます。
この過程で客観視を習慣化し、自分の状態を常にモニタリングします。フォーカシングで感情を聴くことで、体からのメッセージを受け取り、定期的に活動を見直すことで、常に最適な方向に進んでいるか確認します。
次のアクション
今日から始められることがあります。
3日後引き寄せ日記を書き始めましょう。毎日続けることで、理想の未来が見えやすくなります。今の状態を100点満点で評価し、自分の現在地を把握してください。フォーカシングを試してみましょう。最初は5分でも構いません。パーミッションワークを実践し、無意識の制限を外していきましょう。そして、自分の活動リストを作り、それぞれの効果を評価してください。
完璧を目指す必要はありません。まず始めることが大切です。ADHDの特性は武器になります。自分を責めず、特性を活かす方法を見つけていきましょう。
参考図書
より深く学びたい方には、『優しいフォーカシング』とケリー・マクゴニガル著『スタンフォードの自分を変える教室』をお勧めします。これらの書籍は、本記事で紹介した技法の理論的背景や、さらに詳しい実践方法を学ぶことができます。
さらに学びたい方へ
継続的な成長のために、いくつかの習慣をお勧めします。
週1回の1人会議を実施してください。30分程度で構いません。経営者、管理者、作業者の視点で自分の活動を振り返ります。毎日のフォーカシング習慣を持つことで、自分の感情や体の声に敏感になれます。月1回の活動見直しで、大きな方向性が正しいか確認しましょう。
これらを継続することで、多動力は確実にあなたの武器になります。一歩一歩、着実に進んでいきましょう。
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